4月7日(火)感電
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お風呂上がりにうつらうつらしたまま、炊いたお米をタッパーへ、うつしうつし、冷凍庫にドンとしまう。中身が空になったところで、炊飯器はバランスを崩し、水場へ倒れた。ひっくり返ったそれをひっぱり起こし、電源プラグについた水分をふいていたら、指を伝って電気が流れた。
近ごろ本が読めなくなっている。
文章を目で追っていると、だんだん細々とした仕事を思い出す。その都度小さく考えていると、開いた本は、読まれず、ただそこにあるだけになる。
今朝、開いたページに1枚、桜の花びらが挟まっていた。昨日のお花見から連れ帰ってきたらしい。紙に水分を抜かれた花びらを見ると、丸く実った花々があり、見知った顔の人たちがそれぞれ何かをしている。みな一様に、風が運んできた桜の花びらを髪の毛に絡ませて。それは夢のなかにいるときのように、自分ではどうにもできないことと、自ら働きかけるなにかが、同じタイミングでそこにあった。
昨日の私が見た光景を、昨日とはちがう今日のわたしが思い出す。文章を読めれば、同じ世界にいるちがうだれかの視点で、語られるなにかを求められる。
そう納得して本を閉じ、目的地までのあいだ眠った。
星の音を聞く
夜、友達と夜ご飯を食べた帰り、駅まで1人で歩いていると、
スマホがブーブー鳴っている。
かばんから取り出して、通話ボタンを押す。
「はい、もしもし」
「おい」
デバイスを経由して、男の声が耳の鼓膜を刺激する。
「俺言ったよね、着いたら電話してって。なんでできないの?」
「え、ごめん。なんかあった?」
「え、じゃねんだよ。なんでお前連絡しねーんだよ。」
「え、ごめん。スマホの充電なくなっちゃってた。もしもし?大丈夫?」
声が聞こえなくなった。カチッという音で、彼がライターでタバコに火をつけていることはわかる。
どうしてこうなってしまったのだろう。
わたしたちは、スマホの発明によって、物理的な距離の苦難を乗り越えた。
昔は、姿が見えないほど遠くにいる人に声をかけることはできなかった。
そのとき考えたことは、相手にすぐ届くことはなかったし、別の人や手紙を介して、数日かかってやっと相手に伝わっていた。
それがいまや、わたしたちは、この画面の厚み1cmの膜を介せば、互いに声をかけあうことができる。
こんな近未来的な道具があるのに、離れていても声を聞くことができるなんてすごいことなのに、聞こえてくるのが、こんな沈黙だなんて。
「もしもし」
もう一度声をかけてみる。返事は返ってこない。彼は無言でキレている。
このあと大声で怒鳴られるか、舌打ちをされるか、電話を切られるか。
彼はフーッと息を吐いたあと、スーッと空気を吸って、
「お前なんでそんなこともできねんだよ!!少しは俺の役に立て!!俺の言うこと聞けよ!!ふざけんな!」
「え、ちょっと待っ」
ブッと電話が切れる。
彼からの通信はそこで途絶えた。
いま帰っても怒っているなら、もう少しあとに帰っても怒っているだろう。どうせ怒られるなら、少し遠回りをして帰ろう。
駅に向かっていた足を、公園の方へ向け直し、歩く。
「なんで/そんなことも/できねんだよ」ーこれは疑問形
「少しは/俺の役に/立て」
「俺の/言うこと/聞けよ!」
「ふざけんな!」ーこれらは命令形
言葉を文節で区切って考えると、疑問/命令/命令/命令だ。
難しいことに「なんでそんなこともできねんだよ」は疑問ではない。こういう場面で、彼は理由を知りたいわけではない。
疑問形で投げかけてこられると、わたしの性格では考えざるを得ない。それを知ってか知らずか、彼は「そんなこともできねーお前はなんなんだ!」と言いたいところを「なんでそんなこともできねんだよ」と言い換えている。すると、二人の間にある問題を、わたしだけの「課題」にすることができる。
こうなると、どちらも苦しい。
人が人を見限るタイミングって、多分こういうときなんだろうなと思う。わたしとあなたは合わないね、と理解しないと始まらない。
これからも一緒にいたいから、明日になったら話を聞いてみよう。
夢日記
20240328の夢
エレベーターに乗って自分が住むことになる部屋を見にいった。
その団地は高齢化が進んでいて、エレベーターに乗ってくる人や敷地内を歩く人もみんなご高齢の方だった。
私がこれから住む部屋は、友達と友達の恋人と、その恋人のご両親とが住む家の中にあるため、歩きながら、うっすらその人々の気配を感じながら歩かなければならなかった。
部屋についた。
その部屋の元住人は最近亡くなったらしく、仏具がたくさんあった。なぜ亡くなったと思ったのかは不明だが、部屋に残されたものから、なんとなく高齢男性の一人暮らしがあったことを想像した。
屋根裏部屋のような斜めの天井がおしゃれだな〜と思いながら、これから新生活が始まる期待で張り切った気持ちになった。
しかしそこに女学生が現れると私の心情は一変した。
(ドアをノックする音)
扉を開けると、三つ編みでセーラー服を着た女学生が家賃回収のお知らせを持ってきた。
お知らせは紙ではなく、丸い布に文字が書いてあり、リボンの切れ端までついているとてもおしゃれなもので、触り心地も普通の布とはちがい、厚みのあるメガネ拭きみたいだった。
家賃は5万円ぐらいだと初めに聞いていた気がしたが、見てびっくり。初期費用として500,000かかると。50万...。
0の数を数えたりよく見てみたりすると5が4のように見えなくもない。でも高い。
到底軽い気持ちでは払えない金額に狼狽しながら
「これはやばい...払えないなぁ...」と独り言のように呟くと、
「生きるためにはこれくらい普通普通!普通でしょ?」と女学生が困惑した様子で言ってきた。
「(普通なんだ...、私はそんな普通のこともできないんだ...)」と落ち込み、
とてもおしゃれな部屋だったけど、そこに住むのは諦めることにした。
未練タラタラ自分の家へ帰る途中、諦める理由をトボトボ考えた。
「いやいや、あそこ友達の家の中にあるからけん玉の練習とかしづらくなるし!それになんか部屋も狭かったような気がする!」
あの女学生が持ってきた布のお知らせを読みながら
「それに水道もガスも通ってないって書いてあったし!」
そこで夢は終わった。
見えないけど、あるとして 5
コンタクトをつけているのに
クの字に曲げた人差し指で頬を上向きに撫でたり
右手の中指で眉間を押そうとしたり
手が自然と今ここに存在しない眼鏡を触ろうとする。
行為の途中で眼鏡をかけていないことに気づき、
手は目的を失って彷徨う。
実家に住んでいたとき、白くて太った猫を飼っていた。
オスで、名前を花子という。
私はそれを大変可愛がり、自分の分身だと思っていた。
それは洗濯機の上にいることが多く、いないと思って探すとたいていはそこにいた。
ある日、それは死んだ。
私はそれがいないことを知ったあとも、
洗濯機の上を見てはそれがいないことを知り続けた。
眼鏡をかけていない私は眼鏡をかけている私と交わり
猫を探す私は、その未来で猫がいない私に出会う。
見えないけど、あるとして。4
ーー
ひとりめ
テーブルの向かいに座っている人が、水を飲んでいる。
わたしはガラスのコップに目を向けて「それひと口下さい」と言った。
その人は「いいけど、飲みかけだから...」と台所の方をチラッと見る。
見られた台所は緊張している。
「あー、じゃあちょっと...。あの、新しいコップってどこにありますか?」と
相手に合わせてきいてみた。
ーー
ふたりめ
「うわー、痛そう。」
そう言われて、自分が棚に指をぶつけたことに気づいた。
「すごい音がしましたね」
私が指をぶつけたときの「ドッ」という音を聞いて、痛がっているわたしを想像したらしい。
別に痛くないと思ったから、自分が二重にズレた気がした。

見えないけど、あるとして。

解説)
ゴミのような文章を書く。
ある作品が生まれると、同時に、作品にならなかったものが生まれる。
『マルチ・ミニマル・テキスト』では、後者に目を向ける。
この試みによって、わたしが作品未満だとみなしたものが何だったのかを明らかにしたい。
[ 読 書 予 想 文 ] 1冊目『モモ』

今年はブログを始めよう!と思っていたけど、もう今年も終わりそう。どんな形式が自分に合うのか悩んでいたら12月になってしまった。そもそも文章を書くのが苦手だ。まぁでも、何もしないと上達もしないから、まずは書いてみよう。練習あるのみ。
その第一歩がこれ。
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